antiXでfcitx5-mozcの日本語入力を設定する【第3部:切り替わらない問題の解決】

antiX(IceWM + runit構成)でfcitx5-mozcの日本語入力が切り替わらない――
この問題の解決が、本シリーズ最大の難所だった。
fcitx5-mozcをインストールし、Mozcを入力メソッドに追加しても、Ctrl + Spaceでも半角/全角キーでも日本語に切り替わらない。
原因は環境変数(GTK_IM_MODULE等)が空だったことにあり、しかもその設定を.xprofile.xsessionrcに書いてもantiXでは読み込まれない、
という二重のハマりどころがあり、病みかけた。

一般的なDebian/Ubuntu向けの記事はそのままantiXでは通用せず、情報も少ない。
同じ壁に当たった人が最短で抜けられるよう、先に結論(正解ルート)を示し、その後に「なぜそうなるのか」を回り道込みで解説する構成としてます。

  • 第1部:OS選定と機種評価
  • 第2部:インストールと初期セットアップ
  • 第3部(本記事):日本語入力の設定
  • 第4部:メモリ最適化とブラウザ

結論:これをやれば動く(最短ルート)

antiX(IceWM + runit構成)でfcitx5-mozcを動かすための最小手順は以下の通り。
回り道を避けたい人はこれだけ実行すればよい。


# 1. 必要パッケージをすべてインストール

sudo apt install fcitx5-mozc fcitx5-configtool

# 2. 環境変数をシステム全体に設定(/etc/environment)

sudo geany /etc/environment

/etc/environment の末尾に以下3行を追記(exportは付けない形式)。


# 3. fcitx5を自動起動に登録(antiX固有のstartupファイル)

geany ~/.desktop-session/startup


startupファイルの末尾に以下を追記。


## 日本語入力 fcitx5 を起動
fcitx5 &

# 4. 再起動

sudo reboot


再起動後、fcitx5-configtoolでMozcが入力メソッド一覧にあることを確認し、Ctrl + Spaceで日本語入力に切り替わればゴール。

以下、なぜこの手順に落ち着いたのかを、実際のハマり順に解説する。


難所1:im-configが存在しない

一般的なDebian系の日本語入力設定では、まず入力メソッドを有効化するために次のコマンドを使う。

im-config -n fcitx5


ところがantiXは軽量ディストリのため、im-configが標準で入っていない。「コマンドが見つかりません」と出る。
対処としてはim-configをインストールすればよいのだが、後述の通り、antiXのログイン方式ではim-config経由の設定がそのまま効かないケースがある。
結局、環境変数を直接設定する方が確実だった。


難所2:fcitx5が自動起動していない

im-configをどうにかしても、日本語入力に切り替わらない。
原因を切り分けるため、fcitx5プロセスが動いているか確認する。


ps aux | grep fcitx

ここで、grep fcitxの1行しか返ってこない(=fcitx5プロセスが存在しない)場合、そもそもfcitx5が起動していない。手動で起動してみる。

fcitx5 &

これでタスクトレイにキーボードのアイコンが現れれば、fcitx5本体は正常。問題は「ログイン時に自動起動していない」ことだと切り分けられる。


難所3:設定GUIツールが入っていない

fcitx5の設定画面を開こうとすると、次のようなメッセージが出ることがある。


fcitx5-config-qt が見つかりません。

このバイナリを提供するパッケージ名は、通常 fcitx5-configtool です。

メッセージが親切にパッケージ名を教えてくれている。素直に入れる。

sudo apt install fcitx5-configtool
fcitx5-configtool


これで本来の設定画面(入力メソッドの一覧がある画面)が開く。


設定画面での確認事項

fcitx5-configtoolを開くと、上部に「入力メソッド」「グローバルオプション」「アドオン」の3タブが並ぶ。
「入力メソッド」タブを選ぶと、画面は左右2ペインに分かれる。

  • 左ペイン「現在の入力メソッド」:実際に有効化して使うメソッドの一覧(=ここに並んでいるものを切り替えて使う)
  • 右ペイン「有効な入力メソッド」:追加候補の一覧(検索して左に移す元)

左ペイン「現在の入力メソッド」に、以下2つがこの順序で並んでいる状態が正解。


現在の入力メソッド:
  ┌─────────────────────┐
  │ キーボード - 日本語   │ ← 1番目(英数直接入力用)
  │ Mozc                 │ ← 2番目(日本語変換)
  └─────────────────────┘


画面下部に「第1入力メソッドは非アクティブ状態になります。
通常は第1入力メソッドとしてキーボードまたはキーボード・レイアウト名を置く必要があります」という注意書きがある。
つまり1番目にキーボード(レイアウト)、2番目にMozcという並びでなければならない。順序が逆だと正しく機能しないので注意。

Mozcが左ペインに無い場合は、右ペインの検索欄にmozcと入力し、
出てきた「Mozc」を選んで中央の矢印ボタン(<)で左に移すか、ダブルクリックで追加する。


難所4(本丸):環境変数が空 ― これが真の原因

設定画面でMozcが正しく並んでいるのに、Ctrl + Spaceでも半角/全角キーでも切り替わらない。ここが最大の謎だった。

真の原因は環境変数が設定されていないことだった。以下で確認できる。

echo $GTK_IM_MODULE
echo $QT_IM_MODULE
echo $XMODIFIERS


これらが3つとも**空(何も表示されない)**なら、それが原因。
アプリケーション側が「入力にfcitxを使え」という指示を受け取れておらず、キーを押してもfcitx5に切り替え要求が渡っていない状態である。
fcitx5自体は起動していても、アプリと連携できていなかったわけだ。



【ハマりどころの小ネタ】$& の取り違え

余談だが、確認コマンドを打つ際、echo $GTK_IM_MODULE$(変数展開)を &(バックグラウンド実行)と打ち間違えると、まったく違う挙動になる。
また echo を付け忘れて $GTK_IM_MODULE だけ打つと、シェルがそれをコマンド名と解釈して「コマンドが見つかりません」と出る。
地味だが、環境変数まわりのデバッグ中は打ち間違いも混乱の元になる。落ち着いて echo+半角スペース+$変数名 の形を確認すること。

難所5:どの設定ファイルに書くべきか ― antiX特有の事情

環境変数を設定すればよいと分かったが、どのファイルに書けば読み込まれるのかでさらに回り道した。
Debian系の一般的な作法が、antiXのログイン方式では通用しないことがあるためだ。


試した順に記録する。

ファイル結果
~/.xprofileantiX(IceWM/runit)では読み込まれないことがある。NG
~/.xsessionrc同上。筆者環境では反映されず。NG
/etc/environmentログイン方式を問わず読まれる。これが確実


正解:/etc/environment に書く

/etc/environmentはシステム全体の環境変数を定義するファイルで、ログインの仕組みに依存せず全プロセスに適用される。
ここに書くのが最も確実だった。

sudo geany /etc/environment


末尾に追記(この形式ではexportを付けない点に注意)。


GTK_IM_MODULE=fcitx
QT_IM_MODULE=fcitx
XMODIFIERS=@im=fcitx


fcitx5本体の自動起動は startup ファイルへ

環境変数とは別に、fcitx5プロセスそのものをログイン時に起動させる設定も必要。
antiXには~/.desktop-session/startupという、ログイン時に必ず実行される専用ファイルがある。ここに書くのが本命。
このファイルは既存の内容(ネットワークチェックやvolumeicon起動など)が書かれているので、末尾に追記する。
既存の作法にならい、バックグラウンド起動の&を付ける。


## 日本語入力 fcitx5 を起動
fcitx5 &


動作確認

再起動後、まず環境変数が入ったか確認する。

echo $GTK_IM_MODULE


fcitx と表示されればOK(以前は空だった)。続いてfcitx5が起動しているか。

ps aux | grep fcitx


fcitx5の行が複数出ていれば自動起動も成功。
この状態でテキストエディタ(Geany等)を開き、Ctrl + Spaceを押せば、Mozcに切り替わって日本語が打てる。


まとめ:この難所の本質

このハマりの本質は、「fcitx5が起動していること」と「アプリがfcitx5を使えること」は別問題だという点にある。

  • fcitx5プロセスの起動 → startupファイルで解決
  • アプリとの連携(環境変数)→ /etc/environmentで解決

この2つを別々に、かつantiXのログイン方式に合った場所で設定する必要があった。
一般的なDebian/Ubuntuの記事はim-config.xprofileで完結するものが多く、それがそのままantiXでは通らないため、情報が少なく迷いやすい。
同じ構成(antiX + IceWM + runit)でハマった人は、まず/etc/environment~/.desktop-session/startupの2点を疑ってほしい。

次の第4部では、メモリ2GB・swap無しという構成を安定させるzramの設定と、ブラウザ(Firefox ESR + uBlock Origin)のセットアップを記録する。


本シリーズは、2026年7月時点の作業記録に基づく。